シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「興冷めだといっただろう。待っても無駄だ。とっとと出て行けッッ!!!」


その怒声に驚いたように飛び起きて、女達は全裸のまま部屋から出た。


部屋の外で周涅の声と、小猿くんの雄叫びが聞こえてきたけれど、それは周涅に締められた襖で聞こえなくなった。


久涅は…まだ女達の温もり残る生々しい蒲団の上に、あたしを乱暴に放り投げた。


思い切り腰を打ち付けられて、思わず顔を顰(しか)めたあたしの上に、久涅が覆いかぶさってくる。


「お前は…何でもすると言った。

――裏切るな」


何処までも櫂の顔。


極悪さが抜ければ…ここまで櫂に似ているのか。


数年後の…大人びた櫂じゃないか。


こんな場面でも、恐怖を感じないのは…櫂だと錯覚しているからなのか。


こんな場面で"極悪さ"がないと感じるあたしもあたし。


十分…極悪じゃないか。


だけどなんだろう。


ほんの少しだけ…切なさを感じるのは。


突き刺すような目線に…縋るような光を感じるのは。



「あいつが…俺の真似をしたんだ!!!」



あいつって…櫂?


――芹霞ちゃあああん!!


真似って何!!?



「俺は、あいつだけは…許せない」


そして久涅は――



あたしに口付けた。


強引に。



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