シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
久涅の横をすり抜け、襖を開け放ち…元居た場所に飛び込んだ。
腰まである黒髪を1つに束ねた、凛とした空気を纏う美少女が振り返る。
「紫茉ちゃあああん!!!」
あたしは紫茉ちゃんに飛びついた。
「ああ、大丈夫か、芹霞!!!?」
間違いなく。
この温もりは紫茉ちゃんだ。
「あたし達がきたからもう大丈夫だからな。大丈…」
紫茉ちゃんはあたしの乱れた服装を見ると、瞬間的に顔つきを堅くしたが…あたしが何もなかったと頭を横に振ったら、顔の強ばりを弛めた。
「うん、ありがとう。紫茉ちゃん戻ってこれたんだね!!!」
「ああ、あたしは…何とかな…」
少し…歯切れ悪く感じたのは気のせいだろうか。
そんな中で――
恐ろしい程の緊張感漂う一角があって。
それは赤銅髪の周涅と――煉瓦髪の朱貴が対峙している場所。
言葉無いまま、睨むでもなく…ただ相手の出方を伺っているようで。
朱貴には小柄な小猿くんがしがみついて、彼だけが周涅を睨みつけている。
「朱ちゃん…どういうつもりかな」
声を先に発したのは…周涅。
どんな感情を含んでいるのかまるで感じさせないその声音は、嘲りのような響きに受け取れた。
そして僅かに、目を細めて。
「朱ちゃん…。
勝手に――
紫茉ちゃんを…潜らせたの?」
その言葉には侮蔑に近いものを感じた。