シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「ねえ、朱ちゃん。自分なら紫茉ちゃんを治せるからなんて…自惚れていない?

ねえ…。周涅ちゃんに許可なくそんな勝手なことすれば、幾ら温厚な周涅ちゃんだって勝手に言いたくなる。朱ちゃんは――…」


「やめろッッ!!!」


朱貴が声を荒げた。


「そうだよね、朱ちゃんだってそんなこと望まないよね。

それにこの時期…

危険だって朱ちゃんだって知ってたよね?」


「危険……?」


紫茉ちゃんがあたしを抱きとめたまま、訝った顔をした。

しかしそれには答えず、周涅はちらりと煌を見て。


「その顔…判っているようだね。

それなのに、紫茉ちゃんを…犠牲にしたんだ?

ふうん…?


休戦協定――破る気?」


"休戦協定"


周囲を見渡す限り、それがどんな意味を持つのか判っているのは言った本人と、言われた朱貴だけだろう。


「いつでも…お相手するよ?」


依然軽口のままの周涅から、静かなる…怒りのようなものを感じ、あたしは思わず紫茉ちゃんの服を掴む。


"休戦協定"


意味は判らなくても、不穏なものだということは…2人の様子を見ていれば判る。


紫茉ちゃんが、朱貴を庇うように静かに言った。


「周涅。あたしが頼んだんだ。どうしても潜りたいと。嫌がる朱貴を…無理矢理動かしたのはあたしだ。朱貴が悪いわけじゃない」


「どうして自分で潜ろうとしたの? 勝手に潜るなって、いつも周涅ちゃん…紫茉ちゃんに言ってたよね」


「……助けたい奴がいたから」


それは玲くんや煌を含めて…全ては櫂に繋がる。


紫茉ちゃんは、善意で危険を冒してくれた。


周涅に詰られる筋合いはない。

悪いのはあたし達の方。


だけど…そうした反論を、手を開いて押し止めたのは紫茉ちゃんで。


「あたしが全ての責任を負う。詰るなら…責めるなら…全てあたしにしろ」


そうした潔さに…憧れる。


酷く――憧れるんだ。


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