シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
腕を組んだ周涅は、再度煌に視線を向けて。


「……ふうん?」


それは…何処までも意味ありげなもので。


周涅が興味を抱く話の矛先が、紫茉ちゃんから他に移ったことを知る。


「紫茉ちゃんが居たのに…ワンちゃん、戻ってこれないんだ?

ねえ…本当に周涅ちゃんの術の中で、狂気にやられちゃったの?」


判っている。

きっと周涅は判っているんだ。


「しぶといくせに…そんなに弱かったの?

本当に意外――」


そして思っている。


「周涅ちゃんを…愉しませてくれるような、頑丈な玩具になる気がしてたのにさ」


煌が生き返る可能性があるのなら、否…生き返った後で、嬲りながら息の根を止めようと。


「あーあ。お楽しみをとっとおかねばよかったな~。周涅ちゃん真面目だから、ついつい…仕事を優先しちゃうんだよね~」


多分――

煌をあたし達の元に遣わせたのは、意味あってのことだったんだろう。


その"仕事"に…煌の身体を嬲ることが必要だったかどうかは判らないけれど。

とにかく周涅が、煌の意向を聞き入れてあたし達の元に来るのを許可したということは、煌の心意気に心動かされて…などという簡単なことではなく、全て…計画通りの、必然の行動のような気がするのは何故なのか。


そう、似すぎているからだ。

必然という行動しかとらない、氷皇と呼ばれる存在に。


櫂達の逃亡を見逃したのも…必然。


だとしたら?


全て意味があり、計画通りに導いていたのだとすれば。


此処に遺留する煌も、逃亡した櫂も双方危険に変わりがなく。


"誰が"危険にするかというだけの違い。

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