シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

だけど櫂には、桜ちゃんや玲くんがいる。


此の場に煌を守るものは…あたしだけ。


何が何でも…煌の抜け殻を破壊させるわけにはいかない。


「紫茉ちゃんが来る前に、煌の意識は狂気にやられたの!!!

もう戻って来れないって言ったでしょう!!?」


あたしの…必死の煌『残念説』に、紫茉ちゃんが戸惑った顔を見せる。


「芹霞……?」


そりゃあそうだ。紫茉ちゃんは最後まで煌とともに居た。


あれ、煌はどうなったの?

上手く行ったの?

いつ戻ってくるの?


…そのうち――

戻ってくるのだろう。


募る不安よりも、信頼感が勝る。


ワンコの帰巣本能を信じよう。


だから――

戻ってくる前にまずは此処を納めなきゃ。


戻れる場所がなくなってしまったら、戻れるものも戻れない。


「ね!!!紫茉ちゃん。煌はいなかったよね!!?」


嘘はつけない性質らしい紫茉ちゃんは、あたしの必死の形相に…少々怯みながらも、察してくれて頷いた。


どこまでもぎこちなく。


「……ふうん?」


周涅の疑惑の目が…また煌に向けられる。


それは完全に猜疑心に溢れた眼差し。

あたしの言うことをまるで信じていない目。

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