シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
そして煌は、自ら私の手を離して屋上に着地し、私も続いて足を着ける。
だけど――
「――は!!?」
煌が唖然とした表情で動きを止めた。
そこには――
誰もいなかったから。
確かに、私達は…視線で黄色い男を追尾しながら来たのだ。
姿が消えたというのなら、私達が屋上に足を着けた時、僅かに視線を離したその一瞬のことで。
それは秒に満たない僅かな時間。
その時間に――
悍しい気配ごと全てが消えていたのだ。
まるで。
夢を見ていたかのように。
屋上から見下ろす渋谷の地は、赤く染まっていて。
勿論そこに黄色い影などなく。
第一、こんな高さから飛び降りて無事な人間などいない。
まあ、あれが…人間だったらの話だが。
私は――
妙なことに気付いた。
血溜まりが。
犠牲者が倒れている場所が。
「どうした、桜?」
煌が怪訝な声を発した。
「煌。あの血溜まり…1つの線で結んでみろ」
「あ?」
そして褐色の瞳を細めて眺めていた煌が、低い声を出した。
「あの形は…北斗七星?」
そう、その形は柄杓(ひしゃく)型。