シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「周涅ちゃんね、嘘って嫌いなんだ。
もし嘘ついていたら…」
赤銅色の瞳は…底冷えしていた。
「どうしようね、久涅ちゃん」
促した先には久涅が居た。
獲物に逃げられた怒りを露にして、壁に身体を凭れさせてこっちを見ている。
あたしの震えを感じたのか、紫茉ちゃんが間を割るようにして立ってくれて、あたしの視界から久涅を消した。
「紫茉ちゃん、こっちおいで」
周涅が笑った。
「翠くんも。皇城を敵を回したくないのなら、雄黄様代理で大三位である周涅ちゃんのトコにきなさい」
それは強制的な強さをもって。
権威を振りかざし、力で捻じ伏せるのは…得意なのだろう。
「来い」
口調を変えた周涅に、あたしは凄まじい恐怖を感じた。
従わずにはいられない…そんな思いにさせるもので。
もし逆らったのなら、この2人はどうなるか判らない。
「小娘…来い」
久涅があたしを呼んだ。
「その2人を周涅に殺させたくないのなら、俺の元に来い」
「殺させたくないって…紫茉ちゃんは妹で、小猿くんは周涅が守るべき存在じゃないの!!!」
しかし――
「この男に――
そんな理屈は通用しない」
そういったのは朱貴で。
「だからこその…非情な大三位。慈悲の心などない」
「はははは~。お褒め頂き、ありがとう~」
赤銅色の瞳はまるで笑っていない。