シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
俺は慌てて、半分以上本気の悪戯をやめた。
ああ、こんなしたい放題出来るチャンスなんて、滅多にねえのに。
つーか、元はと言えば…お前の態勢が悪いんだろ?
嫌なら退ければいいのに、何故退けね?
「ねえ芹霞ちゃん、君はワンちゃんを助けたいの、殺したいの?」
無性に腹立たしく思うこの声は、七瀬の兄貴だろう。
「んー」
そいつの問いに、芹霞は考え込む時間をとった。
「微妙」
何だよそれは!!!
「とりあえず死んで貰いたいと思わなくもない」
おい!!!
だけど思う。
死んだふりをして、動くなって芹霞は言っているのだと。
理由は判らないが、今…そうしないといけない状況なんだ。
だから俺は…大人しくすることにした。
それに安心したのか、静かに離れて行く温かくて柔らかい芹霞の胸を…本当に名残惜しくて思わず薄目を開けて見てみれば、
どすどすどすっ。
芹霞は両手を交互に動かして、また俺の腹に拳を打ち付けた。
どすどすどすっ。
「こんなにしても、煌が生き返らないなんて!!!
ああ――煌、煌ッッッ!!!」
お前…言ってることとやってることが違うんだよ!!!
くそっ…。
完全に目が覚めた。
あの余韻が…無くなっちまったじゃねえか。
僅かに…開けた片目で詰れば、般若の顔つきの芹霞がいて。
俺はまた慌てて目を瞑る。