シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
あの玲が…芹霞以外の女に、ああなんてガツガツ…。
俺を目の前にして、観客構わず平気で盛った"発情"玲に…さすがの俺も顔を歪ませて。
本物の玲はこの女をかなり嫌っていたんだから。
『あ…コ、コホン』
七瀬の咳払いも…わざとらしい。
七瀬…姿もなければ目もないけれど…どんな行為に及ぼうとしているのかは判るらしい。
何処でどう見れているんだろう。
俺達の前でいちゃいちゃべたべた…以上の、何とも艶めかしい行為に発展しそうな2人に、
「この糸…解いてぇ…」
見ていれば…幸せ真っ最中の馬鹿ップル以外の何物でもねえけれど。
だけどよ、桜の裂岩糸で縛られてて…ナニが出来るって?
それは…偽物の玲であれば、ただの凶器だ。
桜に認められない存在は…糸という名の凶器で反撃されるから。
アホ馬鹿玲の手は赤く染まって。
「この糸…解いてぇ…」
それは情欲に満ちた眼差しの儘、俺に強請(ねだ)る。
「解いてよぉぉぉ」
香水女もそうだけれど…スイッチ入った女の火って中々消えねえ。
目の前に玲というごちそうが居て食べられない肉食女は、何が何でも玲を食らおうと…必死だ。
俺は言った。
「だったら…伝えろよ。
自分は幸せだって。
玲が居て"安心"出来たって…氷皇に」
そう、それが目的だったんだから。
「そしたら糸解いて…お前に玲をやる」
まあ、俺のものではねえけどさ。
それすら疑問に思わないのか、女はあっさり頷いた。