シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
頭の弱い女。
玲はにこにこ微笑んでいる。
本物だったら、絶対えげつなく変貌していることだろう。
この女にこの玲はお似合いだ。
確かに、どんな玲でも女を虜にするフェロモンってのは凄いんだけれど、それにやられた女は、欲望を抑えきれずに…きちんと即座に伝達したようで。
伝達方法を何故判っていたのか、ひっかかりはしたのだけれど。
『OK煌。手応えがある』
女はただ目を瞑っただけで――
どういう原理かは判らないけれど、七瀬は何かを感じたらしい。
『氷皇という…周涅と同じ顔の男、恐らく"エディター"の肉体の傍らに控えているな。"あはははは~ ワンワンおめでとう~"だって』
俺には聞こえねえってことは。
それが唯一判る七瀬だけに向けられた祝福の言葉。
だとしたら――
胡散臭い青い男には、こんな展開も判って居たと言うことか。
俺が居て、七瀬も居るという状況に。
それはあいつの"必然"なのか、この世界を覗いていただけなのかは判らねえけれど。
『なあ…あの男は何者だ? あたし…潜っていて、外部から思念…というか声を受け取ったのは初めてだ。あいつも…潜れるのか?』
「知らねえよ、あいつのことは。お前の兄貴もお前によく似たこと出来るのなら、兄貴と同じ顔した氷皇でも出来るんじゃねえか?」
言ってから馬鹿馬鹿しく思った。
顔の造作と力はイコールには結ばれないのは、幾ら馬鹿な俺でも判る。
だけど不思議と――
『何だか…氷皇と周涅は、空気が似ているんだ。だから…あながち逸れた意見でもない気がする』
七瀬までも…許容できる"何か"を感じ取ったらしい。
とにかくも氷皇は緋狭姉と並ぶ最強男で、出来ねえことはないだろうし…今更何が出来ても驚くことはないけれど。
俺の…此処での役目は終わったんだ。
――王子様…シンデレラに、選んだという証拠のを頂戴?
"エディター"の糸を解いた時、あの女はそう言った。