シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

あいつの武器を…返さねば。


俺は――

隔りなく無限に続くような天井を見上げて、目を瞑った。


要は俺の偃月刀の顕現と同じこと。


桜の顕現の際の想起の力加減に併せた、俺の想起の力をぶつければ…驚いた糸は持ち主に返るはず。


桜との想起力を併せる練習は、日頃…緋狭姉の修行でやっていたから、簡単で。


そして糸は――

俺の手に惑った震えを伝えて、消えたんだ。


俺は――


「頼む…桜の元に帰ってくれ。そして…何だか判らねえけど、櫂がおかしなことに巻き込まれて危機に陥る前に、横須賀に連れてくれ」


願いを込めた。


女の狂喜の声に…櫂が収めたはずの"狂気"がざわざわと蠢き出す。


櫂の…あれだけの力で吸引しても、残滓にまだ力が持てるというのなら…この女の中にある"狂気"はどれだけのものよ?


ざわざわ…。


不吉なざわめきに呼応するように、風景がぶれたように感じ、俺は思わず目を擦った。


錯覚じゃねえ。


この世界が…揺れている!!?


『……煌、やばい。"エディター"が目覚めようとしている。世界が壊れる前に…此処から脱出する』


俺は頷いた。


『何だ…この力!!? 別の場所から…力が、内部破壊させようとする力が働いている!!! ああ…煌、気をつけろ…何か…来る!!!!』


七瀬の声と同時に…俺の身体は持ち上がり、まるで櫂の風の力に翻弄される敵のように…空間にくるくると回り出したんだ。


『煌、煌!!!!』


「大丈夫だ、七瀬!!! お前こそ早く脱出しろ!!!」


この世界を構成していたものが、まるでタイルが剥がれるように…剥離していく。


あの女も、目を失った玲も…一枚の絵のように、剥がれ落ちて…消滅していく。


その速度は凄まじく、上方に舞い上がる俺に差し迫ってきて。


冗談じゃねえ。


俺も剥がれ落ちて溜まるか!!!



櫂を守るんだ。

芹霞の元に帰るんだ。



絶対――滅んで溜まるか!!!



今度は上方から…

目の眩むような光が注ぎ込まれ、思わず目を細めた俺の身体は――



消えたんだ。



戻ったんだ。



俺の身体に。

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