シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「――へえ?
俺が…櫂の処から去るって?
それも"運命"だって?」
俺はそれを一笑に付した。
そして――
顔から笑いを消す。
「馬鹿にするな。
俺はどんなことがあっても…櫂の護衛で幼馴染だ。
何があっても、俺は櫂から離れねえ!!!」
そう力んで叫ぶ俺に返ったのは…久涅の笑い声。
「…何がおかしいよ!!?」
しかし久涅の声は大きくなるばかりで。
馬鹿にされてるんだ。
「駄目だよ久涅ちゃん、ワンちゃん真剣に言っているんだから笑っちゃ…ははは…あ、失礼。じゃあね、此処から逃してあげる。逃してあげるから…せいぜいもがいてみれば?
運命っていうものに」
そして周涅が久涅を見れば。
「お前の好きにしていいぞ?」
まだ肩を揺すって笑い続ける久涅は、片手を上げただけで合図をする。
「ん。ということで。
ワンちゃん。君の意志が運命を覆すことが出来るのか…頑張ってみてよ。
ただの出演者たる君の力が、何処まで脚本を変えられるか。
何処まで"必然"を"ただの偶然"に出来るか。
――出来るならね?」
全貌は判らないなりにも…察することがあるとすれば…
多分…俺がすんなり放たれるのも、その"脚本"の一部なんだろう。