シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「"ディレクター"を超えて、逆転劇を見せてよ?」
"ディレクター"。
ああ、あの…一縷の義兄だとかいう、櫂達を嵌めた男か。
全てはあいつの書いたシナリオということなのか!!?
そして周涅は時計を見て――
「さあ、あと1時間切ったよ?」
ズボンのポケットから何かを取り出し、それを朱貴に投げた。
朱貴は反射的にそれを掴んだ。
「周涅ちゃんの車の鍵。八門の陣は使えないのは判っているでしょう? それでワンちゃん達が望む場所に連れて行ってあげてよ。車走らせればぎりぎり付近には行き着くでしょう」
ありえねえ。
そんなのは親切じゃねえ、絶対何かある。
「何を…企んでいる?」
俺の唸るような威嚇を、周涅は軽く笑い飛ばす。
「だから。"運命"という脚本通りに進むのが、まっこと正であればさ、ワンちゃん? 君の抵抗は意味ないことなんだって。
何があっても結果は変わらない。
行ってみてご覧?
周涅ちゃんの言葉が如何に正しいか判るから」
それは何処までも意味ありげで。
俺の服の裾を、芹霞がぎゅっと掴むのが判った。
不安さを訴えてきた。
俺は――
まだ痛む手を動かし、上から芹霞の手を握りしめた。
「その言葉…後悔させてやるから。
俺は。何があっても、櫂を裏切らないッッ!!」
「ふふふ、折角周涅ちゃん、その言葉を避けてあげてたのにね。どうぞどうぞ、お好きに?
そうそう、紫茉ちゃん。君は周涅ちゃんと此処に居ようね」
「は!!?」
七瀬が驚いた声を出す。
「それが…ワンちゃんと芹霞ちゃんを放つ条件。嫌なら、此処からワンちゃん出さない。どう?」
七瀬は不安げな顔をして、俺と芹霞を見て…力なく頷いた。