シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

・煩悶 桜Side

 桜Side
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直ぐに決着はつくはずだった。


しかし何だ、この銃弾・砲弾の量。


まるで何処かのゲリラ戦にでも巻き込まれている銃弾の猛威。


見えぬ敵はどれ程の規模で存在しているというんだ!!?


おまけに…銃器だけではなく、どこからともなく現われる鉄球クレーン車。


暴走するロータリーだの何だの…運転手の居ない重量車が次々に現われ、こちらに向かわれる。


銃弾を向けるのとは別種の敵が、力任せの策に転じたのだろうか。


とにかく私は…波動状に広げた裂岩糸で切りまくった。


痛みなんて気にしている余裕はなかった。


此処で私が抑えねば、これが全て横須賀港に向かわれては困る。


緋狭様との修行において、堅固のものを瞬間的に広範囲で切り裂くということを訓練していて、本当によかったと思う。


人でも鉄でも此の世に存在している限り、必ず"弱い"繋ぎ目はあるからと、緋狭様はそう私に教え、そして私はそれを目ではなく…心眼において捉える訓練をしてきたのだ。


だから…敵の姿が見えようが見えまいが、さしたる影響はなく。


そう思えば…今私がこの見えぬ敵と相対しているのは、好都合だった。


櫂様・玲様よりも…私の戦闘スタイルの方が適合しているのだから。


お2人は…横須賀港に辿りつけられただろうか。


私の脳裏から…櫂様の声が離れない。


――俺には、お前が必要だ。


配下にとって、尊敬する主からそんな言葉を貰えることは、この上なき名誉。


私の心は、凄く浮ついてしまった。


絶対、私は櫂様の元に駆け付ける。


そう心に刻んで敵の一掃に努めていた時だった。


殺気――!!?



そして――



「"ジキヨクナール"って、α-BR中毒者にも有効だったんだ」


子供の笑い声がしたのは。
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