シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
蠱毒……。
2ヶ月前、邪念に取り憑かれていた藤姫が指揮して育てたそれは、"約束の地(カナン)"にも繋がり、"ゲーム"という共通のふざけたものの名前に隠れていた。
実際のルーツは、毒を持つ5種の虫を1つの甕に入れて共食いさせ、生き残った毒虫を蠱毒とし、相手を呪い殺すというもの。
それを応用し、人間同士殺し合う際に生じた恐怖や怨恨などを毒と見なし、生き残りを賭けたゲームを開催し…その呪力を利用しようとした人間がいたのは遠くない昔。
蠱毒を用いる呪術を、正式には巫蠱(ふこ)術と呼ぶ。
古来より、その巫蠱術を使う宗派は…
道教…その流れを汲む陰陽道。
その専門家(エキスパート)は――
――…皇城。
皇城が…何か関係があるというのか。
いや、それよりも。
この成分が…蠱毒に連なる怪しげなもので作られていたとして。
どうしてそれを飲んだ私が、七瀬紫茉の"力"となる?
同じモノを飲んでいたというのなら、私だって同格のはずじゃないか。
「紫茉を…"北斗の巫女"ってのを、君は判っていないよね…」
愉快そうに凱が言った。
「どうして朱貴が守っているのか。
どうして周涅様が動いているのか」
そして。
「どうして…紫堂久涅が出てきたか」
私は顔を強張らせた。
「何か関係あるのか!!?」
「ふふふ、それは内緒~」
聞かねばならない気がした。
だから私は――
「では…
力尽くで…吐かせる」
私は裂岩糸を、握りしめた。