シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


途端に凱は…


「うわ、うわわわ!!! 何で初っ端から太一真君(たいつしんくん)の力!!? あ、あいつ…そんなことも出来るのかよ!!!? うわ、やば…本当に出来るのか!!? な、何であいつあんなに怒って……るんですの!!?」


ロリだ。


無性に腹立たしいロリ声は…雅か。


「な、なんで私が…凱、凱!!? 逃げないで下さ……煩い、お前がなんとか……逃げるんですの!!?」


身内で喧嘩を始めたらしい。


それくらい、2人…目の前の少年の慌てようで。


詠唱が続く、この声は――


もう聞き慣れてしまった朱貴のもの。


確かに怒りを孕んでいる気もするけれど。



「……太一真君に感ず、奇一(きいつ)奇一たちまち感通、如律令!!!」


そして、赤い…目映い光が奔ってきた。


思わず目を細めた私の横で、朱貴の声がした。



「とっとと、あのウルウルチワワの元に行けッッ!!!」


ウルウル…チワワ…?


「あんなでかい図体をして、なんて目をするんだ!!! 幾ら俺でも愛護精神はあるんだ!!!」


煌――


のことか…?


ウルウル…?


あいつ…何しでかした…?


半分うんざりとした心地となった私に、


「あ、愛護精神なら…わ、私を…こら逃げるな雅…いやあ、凱!!!」


「煩い…小童共。何で俺が…紫茉を残してくる羽目になる!!!!」


今まで以上の怒声。


朱貴は凱…雅の背中を踏み潰している。



何処か…煌を踏み潰している緋狭様を彷彿させた。



七瀬紫茉と離れたのが…気に食わないのか。

ウルウルチワワに使わされたのが気に食わないのか。



ただ思うことは――


静寂。


あれだけの銃弾が…鳴り止んだという事実。


《妖魔》というものは…居なくなったのだろうか。


どれ程の力を持つのか判らない、朱貴という男。


七瀬紫茉を守ろうとしている男。


きっと…彼は全てを知っているのだろう。


だけど今は――


「恩に着るッッ!!!」


煌の元に行かねば!!!

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