シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

煌は――奇怪なものを体内から吐き出した時、自らの辿る運命というものを覚悟し、それでも最後の最後まで…櫂様の為に走り抜けたいと、私に言ったから。


櫂様の危険の種になるならば、私に"最期"を委ねたから。


そして私は…危険だと承知で、煌を受け入れた。


判っていて…危険を招きいれた、私も同罪だ。


だけど…煌は自分を許さないだろう。


裏切らないという彼の"意識"上での絶対的自信が、昔も今も…崩れている事実を突きつけられれば。


これからも裏切るかもしれないという恐れがある限り、煌は…今まで通りにはいられない。


今まで通り、櫂様を守ることは出来ない。



現実――

煌からは力が失われ、芹霞さんの声も届いていない。


だけど救いがあるのは――

芹霞さんを見ている限りにおいて、煌の過ちは…彼女のマイナスにはなっていないということ。


彼女は強い。

彼女の煌に対する信頼と愛情は強い。


どんな事実があろうとも、彼女は変わらない。

そしてそれは櫂様も同じだろう。


櫂様は…8年前、目の前で繰り広げられた惨劇を目にしていて、それでも尚…煌を所望し、愛されて頼りにされてきたのだ。


恐らく――誰よりも衝撃を受けていたのは櫂様のはずで。

それを諭したのは、恐らくは緋狭様。


今更、何が出てきても櫂様は動じないだろう。


8年間、それだけの強い絆が彼らに出来ていたのだ。


今何が出てこようとも…私達がしっかりフォローすればいいだけ。


煌の身が、どんなに敵に加担していようとも…私達が引き摺り上げればいいだけ。


それが判っていないのは…煌だけ。


煌の常日頃抱く精神的な弱さが…どこまでも煌の誇りを奪っていく――…。



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