シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
ある日常
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すっかり肌寒くなった、11月中旬の東京。


吐く息も仄かに白くなり、街で行き交う人々のコートはどれも温かそうなものに切り替わっている。


渋谷駅南口、モヤイ像。


かの有名なモアイ像をモデルとし、ウェーブの髪を加えた奇天烈な像の前に、あたし…神崎芹霞(カンザキセリカ)は立っている。


待ち合わせ時間まであと5分。


「――で、どうして由香ちゃんのお兄さんである榊(サカキ)さんが、あたしと一緒に居るんですかね?」


「さあ? どうしてですかね?」


長い黒髪を、低い位置で1つに束ねた…アーモンド型の目をした美形の男。


細身で背の高い彼が、横に居るだけでも…連鎖的にあたしまで相当に目立つ。


先刻から、ちらちらとこちらに向けられる女の目線が気になる。


だから場所を少しずらしてみたけれど、彼もにっこり笑ってついてきた。


折角。


珍しくも、目立つ男達が傍に居ない…自由きままな"道草"になるはずだったのに、これでは相手が違うだけで元の木阿弥。


「あたしと貴方は、"約束の地(カナン)"以来の再会だと思うんですけど、突然現れてあたしの横に貼り付いて今日で連続3日目。一体なんでしょうかね?」


「本当ですね。何なのでしょう?」


こうした――

質問に質問で答え、質問自体を却下させる会話は、以前…青い男がよくしていたもの。


絶対手の内をこちらに見せず、しかし着々と自分の思惑ばかり実行しようとする…。


「貴方は蒼生(アオイ)ちゃんの部下なんですよね?」


「そのはずですがね?」


「じゃあご主人サマの処に行った方がいいと思うんですけど?」


「我が主は今、新しい玩具に夢中で…私は追い払われましてね。だから遊んで下さい、芹霞さん」


にっこり。


笑顔に迫力あるのは、何処となく…玲くんを彷彿させる。


「遊んでって…じゃあ妹さんと…由香ちゃんと遊べばいいじゃないですか」


「由香とは…いつも十分遊んでいますから。特に夜…」


何故――

顔を赤らめるんだ、この人。


由香ちゃんとどんな遊びをしているんだ?



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