シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
もしかして…。
僕は桜華における…説明出来ない不可思議な事象を考えた。
傀儡が結界内に入ったこと。
櫂の符呪が破られたこと。
細かい処を言えば、まだある。
「本当に、それだけか?」
まだ…櫂は、何かを問い質そうとしている。
桜から出た言葉だけでもう…煌の心が大きく揺れ動いた理由になるというのに。
他に何を思っている?
「そんなもので、煌は…俺から離れたのか?」
桜は――
「煌は――
櫂様が決行されると言ってました。
だから…行ったのだと思います」
静かに頭を横に振って、そう言った。
まさか煌は――
「あいつも渦中にあるというのなら。
何かを嗅ぎ取ったと言うことか…」
煌は、櫂をそちらから守る為に?
「俺の――
全ては俺のせいか!!!!」
櫂は夜空に大きく吼えた。
深い哀しみと後悔の声音が、漆黒に消えていく。
「櫂様。
煌は必ず桜が連れ戻します。
ですから、此処は早く!!!」
桜がそう促した時――
「そうだよ~、目と鼻の先とはいえ、ボスがいるんだからねえ」
あはははは~
そんな胡散臭い笑い声が後に続いて。
「氷皇…」
櫂が、忌々しげにその名を呟いた。