シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
ある意味――
氷皇より…僕は緋狭さんの姿を見たくなかった。
漆黒を切り裂く鮮烈な赤色。
漆黒の櫂を、紅皇は切り裂こうとしているのだろうか。
僕は…その光景だけを見たくはなかった。
「おやおや、君達の人数が多いから…また加勢にきたようだね、警護団…あれは副団長率いる一団かな?」
気が…急激に濃厚なものに強まって。
最後の舞台が、整ったことを悟る。
僕は気を引き締める。
その時、桜が言った。
「翠。1つ頼まれて欲しい」
無言を貫いていた藍鉄色の瞳が、ゆっくりと動く。
「頼むから――
櫂様と港に行ってくれ。
久涅に対抗出来るのは…
お前の未知数だ」
「は?」
そして僕を見た。
「玲様。警護団は桜が抑えます。
どうか…行ける処まで、櫂様の傍に…」
その時。
「出でよ、
――金翅鳥(ガルーダ)!!!!」
澄み透るような声が響き渡り――
「何処までもついていてやりたいけれど…許してくれなさそうだ。緋狭さんは」
暗闇が赤く染まった。