シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
漆黒の空に大きく羽ばたく、神鳥の両翼。
炎の赤色を更に神格化したような…輝かんばかりの黄金色が夜空に煌めき、まるで瑞光が放たれたかのような神々しさを魅せる。
まるで救いを求める咎人のように、その光翼に縋りたい心地にならせる魅惑の鳥。
しかしその本性は獰猛で、いかなる罪も赦さず骨の髄まで焼き尽くす業火の鳥。
そんな金翅鳥(ガルーダ)を操るのは、紅皇…緋狭さん。
かつての盟友を従順にさせられる、偉大なる五皇。
力の違い。
存在の違い。
まざまざとそれらを僕達に見せつけて、金翅鳥(ガルーダ)は旋回しながら…辺り一面を火の海にする。
「じゃあ俺は、港にいるからね~。ああ、危ない危ない。アカが本気だしたら、此処は火の地獄だからね、燃えちゃったらたまらないや、あははは~。あちっあちっ」
火を抑えられる氷の力を持つくせに、わざとらしいくらいにぴょんぴょん飛び跳ね――ふっと氷皇の姿が消えた。
それは一瞬。
代わりにゆっくりと現われたのは――
「緋狭さん…いや、紅皇…」
赤い外套を纏い、冷ややかな面差しをした、五皇が1人。
金翅鳥(ガルーダ)を高く上げた指先に止め、ゆったりとした歩調で現われる。
闘うことが逃れきれないというのなら。
だから切り札を使うと櫂が言うのなら。
覚悟を決めたという櫂の顔に、それでも浮かぶのは"不安"。
圧倒的な力の差に、櫂でさえ怖気づく。
切り札の"もしも"を恐れる櫂の負の心が煽られている。
当然だ。
櫂だって人間。
それだけのことを、櫂はやろうとしているんだ。
その不安さを支えたのは、櫂の手首の赤い布。
芹霞という愛しい存在。
櫂は再び、それを口付けた。
僕はそれに対して、まだ心が揺れるけれど――
「櫂、走れッッッ!!!!
此処は僕と桜で食い止める!!!!」
クアアアアアアッッッ
甲高い雄叫びと共に、炎が拡がった。