シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
どうすんだよ、この子。
僕は早く渋谷に行きたくて。
病院なんかに行っている暇はなく。
僕は直接的な因果関係にはないはずだけれど、だからといって、この子をこのまま放置など出来なくて。
本当に仕方が無くて。
「心拍数も呼吸も正常。眠ってるだけな。後で病院に連れて行こう」
――人を殺したくないッッ!!!
その台詞が嫌に脳裏に焼き付いているけれど。
それが真実か否か、考えている時間は僕にはないから。
僕は、少女を後部座席に詰め込んで、運転席に乗り込む。
「僕が行くまで…無事でいてくれよ?」
不安故かもしれない。
心配故かもしれない。
もしくは――
驕り故かも知れない。
僕が皆に合流しないといけない気がしていた。
僕がいないといけない気がした。
それは予感なのか、ただの願望なのか。
見極めることが出来ないまま、僕はアクセルを深く踏み込んだ。
願わくば――
芹霞を守れる唯一の存在になりたい。
例え、僕がいない間に芹霞が窮地に陥っても。
例えそんな芹霞を守ろうとした櫂が危機に瀕していても。
そう思ってしまう"僕"は、やはり狂っているのだ。
僕は薄く笑って、浅ましい狂った夢を打ち払った。