シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


僕は咄嗟に結界を張る。


全ての力を放出し、櫂の援護の結界を作り出した。


何とか…今は弾けているけれど、これが緋狭さん全ての力ではなく。


最強と名高い紅皇相手に、いつまで持つか判らぬ…僕の力。


それでも――


例え刹那の間でも、櫂を導く道標となれ。



「玲…「櫂!!! "切り札"は、藻掻き抜いてから考えろ!!! 早く行け!!!!」


言いかける櫂の言葉を…今度は僕が遮った。


駄目だ。


どう考えても…あと少しの処で、櫂に切り札を使わせるわけにはいかない。


そう――僕が叫ぶんだ。


芹霞がどうの、次期当主がどうの。


そんなことより僕は、まず櫂を行かせたい。


生かせたいんだ。


それは――

煌のことが脳裏に焼き付いていたからかも知れない。


煌は…姿を消しても尚、櫂を守ろうと…僕を動かしているように思えて。


煌。


お前、どんなに辛かっただろうな。


考えただけでも胸が痛くなる。


だから皆、言わずにいたんだ。


知らなくてもいいことだと。


そうなんだよ、煌。


事実は変わらないことなれど、だからこそ僕達の「今」があるというのなら、そのことすらも"必然"だったと――そう受け取れよ。


8年前がなければ、櫂は変わらなかった。

8年前がなければ、僕は解放されなかった。

8年前がなければ、お前は制裁者(アリス)のままだった。

8年前がなければ、桜は櫂の元には行かなかった。


8年前がなければ、芹霞に出会わなかった。



8年前がなければ――

僕達は交差しなかっただろう。

僕達は…ここまで絆を深めなかっただろう。



苦しいことは多々あるけれど、

だけど…それだけじゃないだろう?


8年前があったから、笑いあえたこともあるだろう?

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