シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――――――――――――――――――――――――――――……
苛々しながら何とか混み合う道路をくぐり抜けて、血の臭いに満ちた狂騒の渋谷駅前に着いた。
最悪になりそうな場面を視界に入れた僕は、躊躇なく乱暴に車を乗り捨て、群衆の最中で無我夢中で力を放つ。
僕の放出した力は、皆に牙を剥こうとしていた大群の"何か"に襲いかかり、間一髪で彼らを守ることが出来たんだ。
「……ハァ…ハァッ、
よかった…間に合って…」
これは…蝶!!?
僕の力がそれにぶつかった途端、青白く閃光(スパーク)が散る。
その瞬間。
一瞬だけ露わになった、それの奇妙な姿に、僕は思わず目を細めて。
だけどそんなことに長々と気を取られている暇もなく。
桜が飛び出し、煌を伴って裂岩糸で建物の屋上に向かった。
――何か、居る。
何だこの瘴気。
見上げた僕の目に映ったのは――
「黄色い…外套男?」
蒼白な仮面を被っている。
――……蝶々が…
――黄色い外套を纏った奴になって…
――仮面…青白い仮面をつけていたの。
芹霞が言っていたのと同一ならば。
蝶と男、同時に存在可能ということは――
男には蝶を自在に操る力があるのか。
――黄衣の…王、か。
「玲、助かった」
櫂の声で我に返る。
「櫂、芹霞、無事か!!?」
櫂が笑いながら振り返り、その横からひょっこりと芹霞の姿が見えた。
僕は安堵した。