シンデレラに玻璃の星冠をⅠ



「だが――



それでは坊を守れない。


判っているだろう、玲」




すっと――

目の前に現われた緋狭さん。



そして――


「そこまでの力の放出は、

走り続けたお前に負荷がかかりすぎる。

お前まで――死ぬことはない」



鳩尾に手刀。


途端に意識が――

薄れていく。


崩れ落ちる僕の視界が…暗くなる。


僕の――

力の糧が消えていく。



「逝くのは――

――…坊だけでよい」



僕は…遠ざかろうとする緋狭さんの足を掴んだ。



「櫂を――助けて」



頬に伝い落ちる涙。



「櫂は…必要な…男なんです。


僕のような…"要らない"人間じゃない…」



一瞬だけ…

緋狭さんの表情が崩れた気がした。



「玲。必要なればこそ――

勝負がつく前に…死なねばならぬのだ。


坊も…覚悟していたのだろう?」



ああ、緋狭さん――



「坊の"切り札"を決行させるのは、私だけしかおらぬ」



何処まで判っているのですか。



「煌も制裁者(アリス)に下り、8年前に還った。

お前も、8年前に…還るのだ。


それが…芹霞を守る唯一の手段」



貴方は――。



遠ざかる足音。



僕は薄れる意識の中、思ったんだ。



次期当主に――



ならねばならない、と。




僕が――!!!


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