シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
そして何とか時間内。
横須賀の電力は玲の力の糧となり、緋狭さんの盟友を滅ぼした。
――見事だ、玲。
緋狭さんの満足げな声を背にした俺は、少し…玲が羨ましく思った。
あの緋狭さんに褒められる程の玲。
玲はいつも何度も何度も這い上がり、そして力を身につける。
心臓病など何のハンデにもならない。
そして緋狭さん自身、玲の成長を嬉しそうに見守っているから。
今、相対しているこの時でさえ――
敵である緋狭さんにそんな言葉を吐かせる玲は、本当に凄いと俺は思う。
そんな玲に守られている俺は、本当に情けない弱っちい奴だけれど。
玲を俺は――誇りに思うんだ。
美しくて優しくて万能で。
そして強さまでも持ち合わせる俺の従兄。
同じ血を引いていることが誇らしい。
味方でいてくれることが嬉しくて。
俺も――強くなりたいと思った。
玲のようになりたいと思った。
たとえどんな苦境に喘ごうとも、それで強くなれるのであれば…俺は何処までももがいて喘いで、強くなりたいと思った。
――芹霞ちゃあああん!!!
芹霞の為以上に……俺自身の為に。
俺の"男"の部分を成長させたいと思った。
"男"を磨きたいと思った。
桜だって、以前は俺や玲に意見することはなかったのに、俺達に怒鳴ってでも状況を打開しようと必死に戦う姿は、本当に"男"らしく凛々しいんだ。
別人かと思うほど…桜の"男"も成長している。
煌だってそう。
あいつだって未知数で、かならず何処か強くなり…"男"の部分を磨いている。
気づかぬのは本人だけだ。
俺は煌を信じている。
再会する為には、俺達は強くなっていないといけない。
それは俺が"頼んだこと"だから。
そう。俺の言い出したことに…お前は忠実になっただけだよな?
煌。
お前の心までは、制裁者(アリス)に下っていないよな。
今更…暗殺者の色が抜けた煌に、何の必要性があるというのか。
制裁者(アリス)の復活…。
それだけでは説明しきれない"何か"が…確かに俺にも感じ取れた。
銀の氷皇が、本当に私怨で動いているのか?
そんな私怨…戦った時に見受けられたか?
銀の氷皇にとって、煌はどんな価値がある?