シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
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気づけば辺りは暗くなっていた。


玲を振り返らず走った俺は、玲のことが気になったけれど。


だけど走り続けた。


以前より暗闇に思えるのは、空を舞う金翅鳥(ガルーダ)の金色のオーラがなくなったせいもあるだろう。


永劫消滅したかどうかは判らない。

皇城翠の式のように…いずれ復活できるのかもしれない。


その時、ふと思ったんだ。

朱貴の言葉。


傀儡という使い魔を作り出せるのは、五皇にとっては造作ないこと。


彼は暗示した。


緋狭さんにとっての…使い魔は金翅鳥(ガルーダ)だというのなら。


――あはははは~。


あいつの使い魔は、何だ?


そして。


"エディター"の傀儡を作り出したのが、久涅だというのなら。


久涅という存在は――?


同時に閃くのは、氷皇のパソコンでの最後の言葉。


(蒼`◇)<濃厚氷━☆(゚■゚紫)ノ


あれは…本当に、茶化していただけのものだったのか?


頭に、様々な可能性がぐるぐる廻る。


まず、今回の幕開けは…氷皇が家に来たことから始まり、黄色い蝶の一件で微妙に事態が変化した。


紫堂に謀反の疑いと言っていたのに、当主たる親父は見逃す氷皇。


突然出た久涅がその元凶かと思いきや、親父と氷皇とつるんでいる…そんな感が拭えない。


氷皇が家に訪ねてきた時、あの時は俺は"次期当主"だったんだろう。


そして数日間で紫堂の内情が変化した。


俺が身動き取れない間に、久涅はまんまと次期当主となったのだろう。


もし俺が動けていたら?

そんな情報を耳に入れていたら?


俺は――今の状況には決してさせない。


俺の情報の多くは、玲のネット…電脳界から仕入れたものによる。


もしも久涅が、外界で紫堂の次期当主を名乗っていたら。

更に俺の追放令が東京に流布されていたのだとしたら。


間違いなく、それらの情報を玲は早々に拾い上げる。

そして煌や桜は検証やら是正やらに動き回る。

俺達にかかれば、事態の収束はすぐにつく。


そんないつものパターンを読まれていたとしたら?


俺達全員の拘束は…理由はつくんだ。


本当に――…

謀反の嫌疑がかかっていたのか、それは氷皇しか知らない。

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