シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
サンドリオン――。
それを氷皇の必然の範疇だと考えることは出来ない。
榊の姿を見て芹霞の訴えを聞いた氷皇は、確かにあの時、
――黄衣の王か。
意外性を込めた口調だったから。
そして七不思議に触れさせた氷皇。
皇城が出てきて、黄幡会が出てきて、今に至る。
もしも俺が――
久涅の出現を阻む要素とみなされ、だから氷皇に軟禁されていたとしたら、久涅の出現は…氷皇にとっても必然だということになる。
だが黄衣の王は…彼の想定外だった。
その存在なのか、或いは時期の問題なのか。
だが――
事態が動いたのは、それからなのは間違いないんだ。
七不思議の先に居る、黄幡一縷。
黄幡家に伝わる『戯曲 黄衣の王』
黄幡会。
一縷の義兄であるオッドアイは、俺達を窮地に陥れた"ディレクター"。
一縷の幼馴染である上岐妙は、玲が異常に警戒した"エディター"。
そして俺と芹霞は、一縷と過去繋がりがある。
東京の…瘴気を増大させる七不思議。
玲が手に負えなくなった電脳界の混乱。
緋狭さんとも朱貴とも周涅とも面識がある久涅。
ワケありの七瀬紫茉と周涅ら皇城家。
朱貴という謎の存在。
"生ける屍"と《妖魔》。
俺が思い出せない、一縷との別離と…犬。
全ては――
氷皇の指示の先で、直面した謎。
一斉に動き出した謎。
何処で何が繋がっている?
氷皇は…緋狭さんは、俺に何を言おうとしている?
久涅には…どんな意味がある?
――坊は死なねばなりませぬ。
俺が…今、認識している事柄の多くが、偽りのものだったら?
"演技"
誰がどんな演技をして、どんな劇を作ろうとしている?
そこから見える敵と味方を並べ直せば…。
いや、まさか。
――坊は死なねばなりませぬ。
だとしたら――
俺が居るべき舞台は、此処ではない。
俺はこの舞台には"要らない"人間だ。
ああ――
緋狭さんは…
言いたかったのはそれなのか!!!