シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

緋狭さんには緋狭さんの事情があるんだろう。


だから敵に回った。


だけどそこに…紅皇としてではなく、襦袢姿を再び披露した緋狭さんの"意味"をも同時に考えるならば。


彼女が敵となり俺を殺そうとしていることに、意味を持たせないといけない。


俺が死ぬということが必然の事象というのなら、そうあるべきだと"導いてきた"緋狭さんの行動は常に必然で。


そう。


緋狭さんが意図的に、俺の敵に回ったというのなら。


恐らく緋狭さんは、俺が切り札に行き着くだろうことを見抜いている。


見抜けないのはおかしい。


実際俺は――

緋狭さんの言葉にヒントを得て、切り札に思い至ったのだから。


そして緋狭さんは――

覚悟しても覚悟しても…それでもまだ惑う俺を看破している。



だから、緋狭さんは来たのだ。



躊躇させる"未練"を――

全ての柵(しがらみ)を断ち切らせるために。


迷いの決着をつけて、強制的に"虚無"に戻す為に。


それは自分でやるよりは遙かに劇的で、遙かに確実。

それでも――

五分五分の成功率は…変わらないんだ。



――芹霞ちゃあああん!!!



視界の先には、船から下りた親父と氷皇の姿。


歓迎されていないのは、親父の立ち姿で判る。


必死に走る俺が行き着くというのに。

勝負に負ければ俺はどうなるのか判らないと知りながら…それでも俺を受容する気配はなく。


俺は――

見放されていることを知る。

< 1,141 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop