シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
玲も…こんな気分だったのだろうか。
肩書きに恥じない行動をして頑張っても、それでも突然背を向けられる。
守りたい過去の優しい思い出などは一切無いけれど、それで親に"嫌悪"を体現されるのは心に酷く堪える。
シンデレラを思い出した。
何不自由ない暮らしをしてきたシンデレラが、突然家族となった継母や姉達に虐げられ…かつての境遇を逆転させられた時。
実の父親でさえ、味方についてくれないという孤独の中…
思い描いたのは何であったのか。
愛情のない親父に嫌われた俺が…此処まで感傷に浸るのは、俺が女々しすぎるのだろうか。
シンデレラはどんな苦境でも望みを忘れず、だからこそ魔法使いが力を貸したというのなら。
俺にとっての魔法使いは誰なのか。
シンデレラは、家族に愛着があったのだろうか。
家族と和解することを、望んでいたのだろうか。
俺なら――望まない。
親父なんかいなくてもいい。
親父なんてどうでもいい。
俺は親父の為に生きてきた訳じゃない。
親父の為に次期当主になりたかったわけじゃない。
俺には、仲間と…そして芹霞がいればそれでいい。
それさえあれば、願うものなどない。
ならば――。
その仲間を置き去りにして、犠牲にして――
どうして俺は親父の元に行かねばならないのだろう。
それは俺の矛盾だ。
そしてまた…死すべきことが俺に与えられた役目だというのなら、それが判っている俺が、最期に見るのは一体誰なんだ?
此処には…
仲間も芹霞も居ない。
誰もいないというのに。
最終地点に居るのは…親父だ。