シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


玲も…こんな気分だったのだろうか。

肩書きに恥じない行動をして頑張っても、それでも突然背を向けられる。


守りたい過去の優しい思い出などは一切無いけれど、それで親に"嫌悪"を体現されるのは心に酷く堪える。


シンデレラを思い出した。


何不自由ない暮らしをしてきたシンデレラが、突然家族となった継母や姉達に虐げられ…かつての境遇を逆転させられた時。


実の父親でさえ、味方についてくれないという孤独の中…

思い描いたのは何であったのか。


愛情のない親父に嫌われた俺が…此処まで感傷に浸るのは、俺が女々しすぎるのだろうか。


シンデレラはどんな苦境でも望みを忘れず、だからこそ魔法使いが力を貸したというのなら。


俺にとっての魔法使いは誰なのか。


シンデレラは、家族に愛着があったのだろうか。

家族と和解することを、望んでいたのだろうか。


俺なら――望まない。


親父なんかいなくてもいい。

親父なんてどうでもいい。


俺は親父の為に生きてきた訳じゃない。

親父の為に次期当主になりたかったわけじゃない。


俺には、仲間と…そして芹霞がいればそれでいい。


それさえあれば、願うものなどない。


ならば――。


その仲間を置き去りにして、犠牲にして――

どうして俺は親父の元に行かねばならないのだろう。


それは俺の矛盾だ。


そしてまた…死すべきことが俺に与えられた役目だというのなら、それが判っている俺が、最期に見るのは一体誰なんだ?


此処には…

仲間も芹霞も居ない。


誰もいないというのに。



最終地点に居るのは…親父だ。



< 1,142 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop