シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 


「…芹霞」


思わず呟いたその名前。


迎えに来てと言われた俺は。

常に共に居ると…手首に赤い布を巻かれた俺は。


芹霞の姿を目に出来ないのがとても苦しくて。


殺されてもいいから。

辱めをうけてもいいから。


どうか最愛の女の姿を…一目でもいいから見たいと切に願った。


今、見たいと思った。


俺の人生は、芹霞を守ることで。

俺の永遠は、芹霞に捧げたもので。


その芹霞が居ないことは…俺の覚悟を揺さぶるんだ。


こんなになっても尚。

玲に託してもそれでも尚。


俺は芹霞に未練があって。


芹霞の幸せを誰より強く願っているはずなのに。


幸せにする相手が俺ではない可能性を考えるだけで、拒否感に全身が切り裂かれそうで。


肌という肌を掻き毟り、発狂しそうで。


溢れる想いが熱く零れて、息が出来ないんだ。



――芹霞ちゃあああん!!!



行かないで。

離れないで。



切なさと苦しさに、そして滾る想いに胸を焦がされる。


会いたい。


置いてきたのは俺だというのに。


触れたい。


勝負を優先させたのは俺なのに。


煌も桜も玲も。


俺を行かせようとその身を捧げたというのに。


ゴール目の前に俺は今、泣き崩れてしまいそうな程、芹霞を求めていて。


ああ、何でこんなに心を制御出来ない!!?

ああ、何でこんなに心が乱される!!?

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