シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「翠くん、おやめなさいッッッ!!!」
朱貴の声。
「小猿くん、いっけぇッッッッッ!!!!」
芹霞の声が聞こえたということは、驚愕した朱貴が手を離したということか。
それ程、朱貴は…驚いているというのか。
「小賢しい。こんな符呪の力如き――」
「更に追加!!! 水の符呪ッッ!!!」
翠の増えた黄色い紙は、もう1本の水の柱を作った。
轟音を立ててうねる2つの水柱は、互いに絡まりあうようにして1本になる。
それはまさしく、怒涛の如き水柱。
「よっしゃあ、更に更に水の符呪ッッッ!!!」
3本の水柱が、やがて1つになり――
――…久涅に向う。
その姿は…まるで水で出来た龍のように。
しなやかに、荒々しく。
まるでCGの如き迫力と神々しさを兼ね添えて、久涅に向った。
ここまでのモノを繰り出せるとは思わなかった俺は、複雑な心境で。
皇城翠は…素材が良すぎるのかも知れない。
それは、今の俺にとっては好都合。
一か八かの賭けとなりえるんだ。
翠が叫んだ。
「走れ、紫堂櫂ッッッ!!!!」
複雑な心境は変わらぬはずなのに、彼もまた俺を助けようとしている。
利用して巻き込んだのは俺なのに、本来彼は傍観側にいるべき人間なのに。
身勝手な俺を、彼の意思でもって救おうとしてくれるのか。