シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


蛆…蚕…。

それを体内に秘めた煌が、無事でいられる保証はなく。

ましてや朱貴にも救済策がないというのなら。


脳裏に思い浮かぶのは…"エディター"の傀儡。


あの獰猛さを秘めた奇怪なものが、頑丈な肉体を誇る煌を蝕まないとは言い切れない。

むしろ、煌の身体を蝕む外敵だ。


だからこそ――


「煌を助けて、ねえッッッ!!!!」


煌は…未来を諦めている。


「俺には…あれは祓えない。特殊で厄介な類のものだ」


「そんなこと…言わないでよ!!!!」


あたしは泣き叫んだ。


行き場をなくしてしまった煌。

居場所をなくしてしまった煌。


そう思っているのは煌だけ。

還るべき場所は、あたし達の所に決まっているのに!!!


あたし達は、いつでも煌が煌で在るなら――

受け入れるというのに!!!


「矛盾に…気付かないか?」


不意に…そんな言葉がかけられた。


「矛盾?」


濃灰色の瞳は…ぞくりとする程怜悧なものだった。


「全ての状況が判っているBR001が、BR002を欲しがった理由は何だと思う?」



「え? 制裁者(アリス)の復活でしょう?」


「蛆に塗れてこの先"絶望的"なあいつを、何故BR001は欲しがる?」



そう言われれば――そうだ。


あの状態の煌を、そのまま放置しておけば…近いうち死んでしまうだろう。


制裁者(アリス)の復活の役には立たないかもしれない。

寧ろ、足をひっぱる可能性の方が高い。


だとしたら…?


「銀色氷皇は…

煌を治せるの?」


朱貴は言った。


「恐らくな」

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