シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
それを煌は見越して…行ったというの?

櫂を守る為に。


だけど、今さえ乗り切れば…櫂はもう安全なんだよ?


「そうとは、思っていない。…煌という男は」


あたしの思考を見抜いて、ずばりと朱貴は言った。


「これが始まりだと思っている。だからこそ、今を捨てて…未来に賭けた。わざわざ飛び込んだんだ、"危険"の中に」


「どういうこと…?」


「紫堂櫂に降りかかる災厄の一端を、自ら掴みにいったんだ」


どくん。

不穏な動きを見せる心臓。


あたしの中の陽斗が…警告を出している。


終わらないの?

明日、皆で笑いあえないの?



「中々勘はいいようだ、あの男。

だが――

1つ惜しいことをしている」


「何?」


「制裁者(アリス)に下る条件に、"今"、紫堂櫂に手を出すなと言った。

そんなおいしい場面に、ありえないことをわざわざ呈示するとは…本当に残念な男だ」


煌が櫂を守ろうとしていた姿勢は明白だとは判ったけれど、


「ありえないことって何?」


朱貴は笑った。


「ありえないこと、だ。BR001が、港に…最終地点に現れることなど、ありえなかった」


「どういうこと!!?」


しかし朱貴は答えず…


「煌が…"望み"さえしなければ、こんな事態にならなかったのにな。

まだまだ…心が弱い。鍛え甲斐があるということか」


そう呟いた。


全く意味が判らない。


だけど――


「弱さ故に…自我を保てていればいいんだがな」


不穏さを吹き飛ばすほどの、櫂への心をあたしは知っているから。


煌。


あたしに"演技"したのだと…あたしはそう信じるから。


戻ってくるんだよ、煌。


戻ってこなければ…


「あたしが、怒鳴り込みに行くからッッッ!!!」


煌を信じようと思う。

煌は弱くは無い。


絶対煌は帰って来る!!!

何が何でも、帰ってこさせるから!!!


だから…櫂を助ける為に…頑張ろう!!!


そう…思うしかなかった。


今は――。

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