シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
気にするな。
取り合うな。
こんな男に、あたしの櫂の強さは判らない。
無視をした態度が気に障ったのか、久涅はあたしの腕を取って、反対側の手であたしの顔を正面に捻じ曲げた。
「何処まで…俺を拒む」
まるで震えているような声は…どんな感情が込められているのか。
「お前は俺を選んだ。だから…俺は櫂を離した。
それなのにお前は俺を拒む。
全ては嘘偽りなのか!!?」
何を言っているんだろう、この人。
「あたしは――
あんたを選んだつもりはないよ、久涅」
真っ直ぐに、櫂と似た瞳を見つめた。
「嘘だ偽りだとあたしを責めるなら、まずは自分の行動を思い返すことだね」
久涅の眉間に、深い皺が刻まれる。
まるで櫂に怒られている気分。
「俺がいつ嘘をついた、偽りを言った!!?」
随分と…言葉の内容を気にするんだね。
この男、意外と神経質の気があるのかも。
「俺はいつも!!! 本当のことしか言っていない!!!」
どうだかね。
そんな思いを込めて、久涅を睨んでやった。
何だかもう…同情すら出来なくなった。
それは煌の一件が絡んでいる。
どうせあんたが裏で糸を引いていたんでしょう。
煌を苦しませたあんたを、
そして更に櫂を苦しませるあんたを、
「あたしは許さない」
あたしの大事な者達を傷つけて、
それで喜んでいられるような人種を、
「理解したくもない」
櫂は必死なんだ。
櫂を守る玲くんも桜ちゃんも…皆必死で頑張っている。
あたしだけこんな処で傍観者。
ああ…口惜しいよ!!!