シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
僕の呟きに、桜と煌が険しい顔を合わせている。
「どうかしたの?」
「屋上から見たこの惨状が、柄杓型だったんです」
「え?」
「今は警察だの救急隊員だのが被害者病院に運んでいるけどよ、女達がやられていた場所を繋ぐと、北斗七星の形してたんだ」
偶然…と思う方が無理な気がする。
「…芹霞。そのシマちゃんとやらの素性は?」
櫂が問えば、芹霞は首を横に振る。
「両親が死んでいて、東京に来たばかりで、今複数の人達と同居して桜華に通学してるってことしか。
小猿くんや、昨日のイケメンさんも同居人かも…」
「「「イケメン!!?」」」
動揺の声を発したのは、僕の他に櫂と煌。
「え、う、うん。白衣着ていて、桜華の保健医しているみたい。かなりインパクトあるモテそうな人だったよ。もしかしてその人が今迎えに来たのかもしれないね」
やはり――
美少女には、美形が放っておかないか。
そしてそれは芹霞に対しても同じ事。
櫂や煌以外の美形だって、芹霞と出会えば、心惹かれて執拗に付き纏う可能性はある。
何より芹霞は無自覚だから、そんな事態を自ら招きそうで。
「……」
僕だけではなく…櫂も煌も顔を引き攣らせ、どちらかかの小さな舌打ちが聞こえた。
美形だから不安なわけではない。
それに芹霞が興味を持ってしまうことが、心配なんだ。
芹霞の"興味"に翻弄された"約束の地(カナン)"からの帰還後。
その内の1つだった僕の"おでかけ"は、突如割り込んだZodiacにかき消された。
所詮僕の存在なんてそんな程度だと、唇噛みしめたあの屈辱を、頼むからもう再現させないで欲しい。
本当に――。
本当に君が好きすぎて。
鎖で繋いで縛っておきたいくらいなんだ。
櫂にも煌にも、近づけさせたくないんだ。
余計な不安愁訴は、もう増やさないで欲しい。
ましてや、久遠のような超絶な美形でさえ…芹霞を想いを寄せているというんだ、その保健医が君に惚れてしまったら…そして君が興味を持ってしまったら、どうすればいいんだよ。
まあ…奪い取らせないけれど。
絶対。