シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
更に――
「小猿も、見てくれはいいしな…」
ぼそり。
煌の言葉で、僕は内心舌打ちした。
「小猿?」
耳慣れない単語に、櫂が目を細める。
「あ、櫂に喧嘩売ろうとしていた桜華の中学生だよ。紫茉ちゃんと一緒に居た。確か…皇城翠っていう名…」
「「皇城!!?」」
僕と櫂の声が重なった。
そして――
思い出した。
――あれは家紋でいう星紋、"九曜紋"だったと思う。
僕が思わず櫂を見ると、
「成程…。皇城家は…桓武平氏の流れを汲んだ家系。
皇城家の家紋は、"九曜紋"だ。
親父の部屋にあった、奇妙な蛇の置物の刻印と同じ」
「偶然か――
それとも、必然か」
僕が呟くと、
「皇城?」
煌の顔が険阻に満ちている。
「皇城一族の実態は闇に包まれているが、各務と同じく…何らかの力を持っている集団だ。紫堂が寄せ集めの烏合の衆だとすれば、皇城は古来より朝廷…権力の中枢に認められた、正統派の異能力集団と言えるだろう」
そして櫂は続ける。
「政(まつりごと)の呪術的サポートの見返りに、皇城は此の世の絶大な権力を与えられ、表向き閥族としても栄華を誇る。例え元老院いえども、迂闊に手出しできない程、巨大組織なんだ。そして"力"蔓延(はびこ)る裏世界においてもその名は轟き、TOP3には君臨するだろう。
力の強さにより厳格な階級が決められ、血が直系に近付き、濃くなればなる程、その力は強まると聞く。
歴史と伝統ある呪術組織。
皇城は、道教の流れを汲んだ陰陽道の家系だ。久遠の布陣術にもよく似た、言わば持ち歩き可能な"符"の専門家(スペシャリスト)。
道教だの、陰陽道だの。それには、"北斗七星"、"鬼"はよく出現する」
偶然の符合というには、条件が整いすぎていて。