シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ねえ、じゃあ皇城の名字を持つ小猿くん…実は凄く強いの?」
すると桜が口を開いた。
「どうでしょうか。初見では"勘がいい"程度の気がしました。煌の力にも遙か及びません。しかし気になるのは…櫂様の名前を聞いてからの変貌。怒り…でしょうか。それにより、彼の力は…"気"は突如高まったのは事実。しかし、警護団員の新人と、同格かそれより少し上…程度ですが。櫂様には遠く及びません」
「あの小猿は…おちこぼれ?」
煌が、神妙な顔をした。
「まあ…猿だもんなあ」
僕には、その結論に至った過程がよく判らないけれど。
「皇城には"御前"と呼ばれる当主と、息子の"雄黄(ユウキ)"がいるはず。御前は権力と多大な"力"をひけらかして強引に物事をすすめると評判は悪いが、雄黄は逆に慈愛深くて誰からも尊敬されていると聞く。その潜在能力は、御前の力を上回るとも。
そんな程度しか情報ない俺が、怒りを向けられる覚えはない。
だとすれば、考えられることは――
俺が与(あずか)り知れぬ処で、
親父が何か噛んでいる」
皇城家の紋を持つ蛇の像を持っていた、紫堂の当主。
謀反の疑いをかけられ、突如姿をくらませた。
「親父の動向を解く鍵は、皇城ということか。
そしてその鏡。"星見鏡"とか叫んで、あの女が小猿から受け取った。
それがある限り、この先必ず接触はあるだろう。
いくら俺達が、芹霞とあの女とを会わせないようにしてもな」
それは――
吉なのか、凶なのか。
「むしろ――
関わらないといけないのかもしれん。
敵か味方か、それとも無関係なのか。
それを見極めるために」
僕は、何かが動き出している気配を感じた。