シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「此処に来る時倒れてね、心配だから病院連れていこうと思うんだ」


それは急いで連れて上げねば。


「ねえ、助手席にゆったりと乗せて上げようよ? あ、人数オーバー?」


「櫂様玲様。桜は歩いて帰ります。引き続き聞き込み調査したいので」


桜ちゃんは至って謙虚で。


まだ特殊装備の願望を捨てきれず、車内を調べる煌とは大違い。

こいつは乗って帰りたいと駄々をこねそうだ。


あたしが電車で帰ると言うと、また櫂に両頬をひっぱられた。


「一番危険なのは、お前なんだ!!!」


そうですね、そうでした。


「う、桜ちゃん。ごめんね。じゃあ煌。この子を助手席に運んで、あんたは後ろに…」


「……駄目。この子は助手席には座らせない」


玲くんが拒絶した。


フェミニストの玲くんが拒否するなんて珍しい。


「僕が運転する車において、

異性は助手席に座らせたくない。

乗せたくないんだ、特別な人以外」


そして、何かを訴えかけるようにあたしを見た。


「ああ、玲くんの拘りポイントなんだね。あたしも気をつけるよ」


"彼女の特権"


恋愛経験値が高い玲くんは、さらりと主張してくる。


玲くんは優しいから、そういうことすら後回しにしそうに思っていたけれど、やっぱり"オトコ"なんだ。


皆の前でそう宣言してくれたら、きっと"彼女"冥利に尽きるだろう。


"お試し"中、俄(にわか)彼女であったあたしとしては、本物と偽物との境界線を明瞭に刻まれたようで、無性に寂しくなったけれど…判っていたじゃないか。所詮、これが現実。

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