シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
余程あたしは、玲くんと近づけたあの時が、心地よかったらしい。


だけど多分、玲くんはそう思っていない。


だからテストで1日"お試し"…"おでかけ"を勝ち取っても、実行しようとしないんだ。


あたしとは違い、必要以上に距離を詰めたくないんだね、きっと。


それを言わずに"お出かけ"を楽しみのように見せてくれていたのは、偏に玲くんの優しさだったのではと思う今日この頃。


あたしは楽しみにしてるんだけどなあ。


そう思いながら、苦笑すれば。



「座りたい? 

僕の…特別な席に」



玲くんが微笑んだ。



「ねえ――。

君は座りたいと思ってくれる?」



微笑んではいるけれど、それは切実な鳶色の瞳で。


「??? だってそこは特別な席なんでしょ? だからあたし後ろで…」


「座ってよ、助手席」


「いやだからね、そこは特別な…」



「だから――

座って。芹霞」



それは痛いほど真っ直ぐな瞳で。

苛立ったような強い語気で言われて。


異性を乗せたくないと宣言したのは玲くんなのに、あたしを乗せようとするなんて。それは矛盾すぎる。


――!!!



それは――

閃きのように思い浮かんで。



「玲くん、もしかして。


あたしのこと…」



途端、鳶色の瞳が焦れたように細められて。



「…芹霞、乗れ」


それまで押し黙っていた櫂の…苛立ったような声が響いた。

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