シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「あたし別に、櫂とずっと黙ったまま一緒に居ても、全然気にならないのに。今更、そんな気遣いしなくてもいいのにね。というか、玲くんにはZodiacがムーディックな曲に聞こえるんだ。櫂も?」
同意を求めた櫂は、何故か忌々しげな顔をあたしに向けていて。
「何処がだ!!! 何が気遣いだ!! ソノ気も失せるような、萎える曲を流して牽制して行きやがって。ああ、何が嬉しくてまたこいつらの曲を聞かねばならないんだ!!」
櫂は、Zodiacが凄く嫌いらしい。
何やらぶつぶつと文句たらたら言いながら、大きな溜息をついて窓の外を見る様は、酷く哀愁が漂っている。
耳に流れるのは、櫂が学園祭のゲリラライブで歌った曲。
勝手にアレンジして、勝手に歌詞まで変えて。
櫂、楽しそうにしてたなあ。
そう思えば。
今の櫂は顔色悪く、会わなかった数日で一気にやつれたようだ。
謀反の疑いにて、蒼生ちゃんの監禁。
短文なのに、ストレスがぎっちり詰まっている。
その上、あたしが不可解な出来事に、櫂を巻き込んだ。
あたしが安心したいが為に勝手に押しかけ…皆の存在にほっとして、夢のように思えてきたら、煌を通じた櫂の制止も聞かずに飛び出して…こんな有様。
櫂は。
もっとイロイロ考えて、動かないといけないはずなのに。
蒼生ちゃんが定めた13日間。
彼が何をしたいのか、あたしにはその魂胆は欲判らないけれど。
とりあえずは、あたしを案じてのことではないのは確かだ。
そんな殊勝な奴じゃない。
櫂達を使って何かをしようとしているに決まっている。
櫂は、あんな奴の思い通りになる奴じゃない。
『気高き獅子』は、嘘臭い存在には負けないんだから!!!