シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「お前…玲をどう思ってる?」



それは凄惨に思うくらい、憂いを含んで。


悲しいような、戸惑っているような、怯えているような。


そんな複雑な色。


「へ? 女のカガミ?」


「……。玲と"お試し"した感想は?」


突然変なことを聞いてくる櫂。


「居心地よかったよ。自慢じゃないけど、あたしはそういうことに慣れていないから、凄く照れてばかりいたけれどね。玲くん綺麗で優しくて強いから…女の子ならイヤだって言う人いないと思うけれど? 何たって"白い王子様"だからね」


からから笑ったけれど、櫂の顔は曇ったまま。


「だけど天下の紫堂財閥背負う櫂は、名実共に現代の…うん、"黒い王子様"だよね。あんたには"平凡さ"が全くないし。

ふふふ、玲くんも優雅で気品あって非凡なんだけれど、変に庶民染みた可愛い処あるからね。それが"次期当主"の肩書きのあるなしの違いなのかな?」


「……あいつは。俺の影になり、本家から出て俺と暮らすと決めた時点で、紫堂では得られない"世俗の知識"を短時間で身につけた。賢さ、柔軟さだけではない。初見で実行出来るだけの力は、あいつの天性の武器だ。

あくまで――後天性で、"努力"しかなかった、俺とは違ってね…」


珍しい。


櫂が弱音を吐いている?


そこまで蒼生ちゃんとの監禁生活は過酷なものだったのか。


「なあ、芹霞。もし――

もし玲が"お試し"じゃなく、

本当にお前と付き合いたいと言ったら…」


言いかけて、櫂は唇を噛むと――

その先を…いや、その質問自体、自ら口にするのを拒んだ。

< 130 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop