シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「お前…玲をどう思ってる?」
それは凄惨に思うくらい、憂いを含んで。
悲しいような、戸惑っているような、怯えているような。
そんな複雑な色。
「へ? 女のカガミ?」
「……。玲と"お試し"した感想は?」
突然変なことを聞いてくる櫂。
「居心地よかったよ。自慢じゃないけど、あたしはそういうことに慣れていないから、凄く照れてばかりいたけれどね。玲くん綺麗で優しくて強いから…女の子ならイヤだって言う人いないと思うけれど? 何たって"白い王子様"だからね」
からから笑ったけれど、櫂の顔は曇ったまま。
「だけど天下の紫堂財閥背負う櫂は、名実共に現代の…うん、"黒い王子様"だよね。あんたには"平凡さ"が全くないし。
ふふふ、玲くんも優雅で気品あって非凡なんだけれど、変に庶民染みた可愛い処あるからね。それが"次期当主"の肩書きのあるなしの違いなのかな?」
「……あいつは。俺の影になり、本家から出て俺と暮らすと決めた時点で、紫堂では得られない"世俗の知識"を短時間で身につけた。賢さ、柔軟さだけではない。初見で実行出来るだけの力は、あいつの天性の武器だ。
あくまで――後天性で、"努力"しかなかった、俺とは違ってね…」
珍しい。
櫂が弱音を吐いている?
そこまで蒼生ちゃんとの監禁生活は過酷なものだったのか。
「なあ、芹霞。もし――
もし玲が"お試し"じゃなく、
本当にお前と付き合いたいと言ったら…」
言いかけて、櫂は唇を噛むと――
その先を…いや、その質問自体、自ら口にするのを拒んだ。