シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 


吸い込まれていく。


その――


憂いの含んだ、闇色の瞳に。



――芹霞ちゃあああん!!



その時。



「ごめんね、遅く…なっ!!!」


ドアを開けて、微笑んだ玲くんの顔が、急激に青ざめて強張って。


「なあ、これいくらなんだ? …俺も買いた…い~ッッ!!?」


連続した声で、はっと我に返る。


あたしと櫂との距離は――

殆ど無かったんだ。


間近に櫂の唇があって、あたしは思わず仰け反った。


煌は開けたばかり助手席のドアを閉め、後部座席のドアを乱暴に開けると、あたしの襟首掴んで外に放り、自らの巨体を押し込んで、櫂の隣に居座った。


「な、何!!?」


腕を組んでこちらを見る褐色の瞳が、攻撃的な剣呑な光を宿して。


そこには確固たる強い意志があって。


「俺は、櫂の護衛!!! お前は俺の隣!!!」


その意志は、どんなものか判らないけれど…。


「判ったわよ、何よ座席くらい…。って、玲くん?」


玲くんが、顔を引き攣らせたまま固まっていて。


まるで見てはいけない何かを見たかのようなその反応に、あたしは玲くんの目の前で、手をぱたぱたと動かしてみる。


「……。……え?」


すると玲くんは凄く驚いた顔をしてあたしを見て、


そして――

哀しげに笑った。


「……。帰ろうか」


何だか――

空気が重く感じるのは気のせい?


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