シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
褐色の瞳を期待にきらきら光らせて、俺と玲を交互に見た後、芹霞に視線を投げる。
芹霞の前で褒めてもらいたいのだろう。
煌は、心に素直だから本当に判りやすい。
芹霞はうんざりとした顔をしていたが、煌の目にはそう映っていないはずだ。
渋谷において――
無力な俺の前で、芹霞が玲を褒めた時の…あの嬉しそうな玲の顔がだぶって、苦笑せざるをえない。
しかし――
「うわ!!!」
消えた火が再び出現する。
「しつこいな、何だよ」
それを煌が消す。
しかしまた火が現れる。
「また~ッッ!!?
イライラするッッ!!
あ゛~ッッ!!!」
煌が濁点がつきの雄叫びを上げた。
火がついたり消えたり。
一番驚いているのは、間近で…必死な消火活動をしている消防隊員だろう。
彼らの真摯な仕事ぶりに敬意を示し、堂々巡りになりそうな怪奇現象をさっくりと終わらせるか。
俺は薄く笑いながら、静かに目を瞑り…顔を掠める冷たい風を右手に集めた。
俺の意思で風が動く。
今。こうして制御可能だということは、やはり渋谷で無効化されたのは"蝶"のせいと言える。
芹霞を前にした、あの屈辱。
俺ではなく、玲が守ったという悔しさ。
苦く思い返しながら、緑の光を纏う。
そして――。
前に突き出すようにした右手に、その手首を掴むように左手で支えて、一気に緑の風を放出させる。
それは一直線状の暴風となり、マンションに向かって伸びていく。
突き当たれば建物を破壊するから、俺は操っている手ごと垂直の角度に向けた。
風は急遽折れ曲がり・・・
そして火を仰ぎ消した。