シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
火の力の気配はまだ感じるけれど。
俺の風は、建物全体を覆い尽くす結界となり、煙さえ上げさせない。
抵抗など許さない。
力には力で。
俺は押さえつける。
その時――
「!!!」
視線を感じて。
見られている。
力を使う俺を、見ている奴が居る。
そして多分それは――。
「お前か、放火魔は!!!」
煌がその方向に走り出した。
橙色が、その方角に行き着く直前。
俺の視界に、そいつの白い何かが靡(なび)いた。
服の裾か?
「ああ、くそっ!!!
逃げられた!!!
あの白衣野郎…医者か!!? 科学者か!!?」
やがて大股で戻ってきた煌は、悔しそうに歯軋りをした。
相手は、白衣を着ていたらしい。
そして。
男が居なくなると同時に、火の力の抵抗がなくなった。
警戒の念は怠らず、少しずつ力の放出を弱めて行った時。
「紫堂~ッッ!!!
やっぱり君の風か~ッッ!!!」
顔中煤だらけの遠坂が現れた。