シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
住んでいた…というよりは、入り浸っていたというべきか。
1秒でも長く芹霞と共に居たくて、例え隣家であっても、家に帰りたくなかっただけ。
成長した今となっては、事情が少し変わっていて。
死んだ母親の実家は空き家となり、俺は芹霞の家以外に居て。
俺は、8年前のあの悪夢以来…神崎家で寝泊まりしたことはなく。
少しでも長く一緒に居たい気持ちは、今も昔もまるで変わりはないけれど…今であったら…昔のような状況になったら、かなりキツい。
――櫂、あったかーい。ぎゅうして寝よう?
――はい、悪い夢を見ないためのおまじない。ほっぺにちゅうしてあげる。うふふふ。おてて繋いで寝ようね。
絶対、芹霞は喜んで再現しそうだから。
昔の俺の方が…忍耐強かったというべきなのか?
今だったら――
昔のように安眠など出来ない。
手を出さない自信は、まるでない。
ただ黙って芹霞の"愛情"に耐えろというのなら、それは拷問以外の何物でもない。
「だけど全員寝泊りするまで、広くないよね、ウチ。まあ全部屋解放して、雑魚寝状態で我慢してもらえばいいけど。まず緋狭姉の部屋は空いてるし、あたしの部屋も勝手に使ってくれていいし。それから…」
「芹霞…俺を見るなよ? 何も言うなよ? 俺の部屋は俺だけのものだ!!! それだけは譲らねえッッ!!!」
涙目で、部屋の権利だけでも死守しようとしている。
だから俺は。
芹霞と目を合わせて、苦笑しながら軽く頷きあった。
言わないでおこう。
あの部屋――
昔俺が使わせて貰っていたとは。