シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

・割当 煌Side

 煌Side
***************


築ウン十年のボロ家に、青いボンドカーが停まっている。


何だか――


借金取りが家に押しかけたような図だ。


隣の噂好きの婆さん、薄く開けたカーテン越しから、あらまあ!と言わんばかりの顔して見てる。


明日にはもう、神崎家のお涙頂戴の…転落物語が始まってるに違いねえ。


桜はまだ姿現さず。


素早さがウリなのに、何とろとろしてんだろう?


芹霞は遠坂と、慌ただしく部屋掃除を始め出した。


遠坂は秋休み中、宮原と何度もウチに泊まりに来ていたから、もう勝手知ったる何とやらで、何に対しても戸惑いがなく、女将に仕える女中頭のようだ。


本当に遠坂という女は、順応性が高い。


「ふふふ~ん♪」


廊下では、芹霞が鼻歌歌いながら、陽気に掃除機をかけている。


そんなに皆が来ると嬉しいのかよ。

いつも俺と2人で悪かったな!!


俺は完全不貞腐れ気味。


年季が入ったダイニングテーブルの椅子に逆方向に座り、背もたれの上で腕組んで、その上に頭を乗せた。


隣り合わせの居間では、櫂の向かい側で、玲が芹霞から借りたノートパソコンの接続を始めている。


「スペックが頼りないけど…まあ僕が組み立てたものだからね。そこいらのものよりは、よっぽど機械としては性能がいい」


玲が言うと、何でも芹霞のことを言ってるような気がしてくる。


"少し馬鹿だけど…まあ僕が育てたようなものだからね。そこいらのものよりは、よっぽど"女"として性能いい"


おい、玲。


"女"の性能って何だよ?

お前何をもって、"イイ"って判断してんだよ。


玲はポケットから取り出したUSBメモリ…だというものを差し込んだ。


「保存してあるプログラム流し込めば、とりあえず今僕がしたいことはできるはずだ。コピー終わるまで、お茶でも入れるね」


まるで自分の家のように、台所を使い始める玲。


何だよ、お前。

その慣れ様は。


此処は俺の家だぞ。

俺と芹霞が8年も同棲してる家なんだぞ!!?


< 144 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop