シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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俺が知っていることは櫂も知っていて。

だけど櫂が知っていることは俺は知らねえ。


櫂がこの家に住んでいたということも、先刻聞いたばかり。


そりゃあ芹霞にも櫂にも、昔にどんなことがあったかなんて、俺にいちいち報告する義務はないかもしれねえけれど、一応俺だって幼馴染だし。


あまりにさらりと、俺の知らない事実を当然のように告げられると、俺という存在がそれだけの…薄っぺらいものなんじゃねえかって落ち込んでしまうんだ。


それは芹霞に関してだけではなく、櫂についても同じ事。


芹霞だけが知っている櫂がいる。


いくら芹霞が8年前までの櫂の姿を俺に訴えても、知らねえもんは知らねえし。


泣き虫だなんだと言われても、ありえなさすぎて、笑い飛ばすしかねえし。


出来るならば、8年前…以前にタイムスリップして、俺の知らねえ2人の姿を知りたい。


そこにあるのは、"永遠"だろう。


俺には向けられねえ、その単語で結ばれた絆。


トータル的には、俺と芹霞、俺と櫂が一緒にいる時間が多いけれど。


それは時間的な問題であって、実質的な濃密さの具合は違うんだろう。


いくら長く一緒に居ても、所詮俺はワンコだし。


大昔故の記憶が、"永遠"に繋がるというのなら、俺は誰以上に古い記憶を持って、芹霞と"永遠"の関係になりてえんだ。


8年間、いや12年間も。


櫂だけに一途に捧げ続けたそれを、俺にも向けて欲しいんだ。


少しだけでもいいから、櫂みたいに優位性を、特別性を、俺にくれよ。


「……はあっ」


茶碗持ち上げる気にもならず、体丸めたまま、ずずずっと音をたてて、茶を啜り、大きな溜息をついた。


こんな態度、桜がいたら怒鳴られてる。


「なんだか、爺さんみたいな飲み方だね」


玲が苦笑している。


「ああ、なんかこのままだと老いて枯れ果てそうだわ。はあっ…。ちょっとシャワー浴びてくる」


頭を切り換えよう。


やっぱ俺は、精神的に何だかおかしい。


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