シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「次は…"上岐(カミキ)物産"。豊洲本社…」


皆と渋谷で別れた後は、ここからのスタート。


渋谷での不可解な事象は気にはなるけれど、芹霞さんの周りには皆がいる。


私が居なくても、芹霞さんは守られる。


ずきん。


胸に閉じ込めてある"何か"が軋んだ痛みを発するけれど。


私は――

見ないフリをしないといけない。


調べるべきことは多々あるが、この調査も等閑(なおざり)にするわけにもいかず、今日はこれから始めようと思った。


私は基本、交通機関というものは利用しない。


それなりに裏世界では顔が知られているために、いつ何処で戦闘になるか判らないから、余計に目立ちたくないのと…多くを巻き込まないために。


時に屋根から屋根へと飛び移ったりして、常に最短距離を移動出来るのは、私にとっては電車を利用するよりよっぽど移動時間を短縮出来る。


そしてこの移動は、足腰を鍛える日々の鍛錬にもなるし一石二鳥。


当然――

馬鹿蜜柑は、実践しようともしない。


面倒臭がりのくせ、ちまちま何度も混み合う路線を乗り換え、じっとしながら交通機関を乗り過ごす方が、彼の性格には合わない気もするけれど。


先刻まであんな凄惨な場面が繰り広げられた東京の空は、晴れ晴れとした青空で。


まるで氷皇の為にあるような空の色。


彼は――

何故13日間の猶予をくれたのだろう。


わざわざ元老院の決定事項を覆してまで。


芹霞さんを守れということではない気がする。


例え緋狭様の妹であれど、そこまでの情はない気がするから。


だとすれば。


そうせざるをえない何かが、起こったということで。


元々"泳がせる"予定なら、"監視"などいう面倒なことを彼がやらなくてもよかったはずで。そもそも、何故氷皇自身が監視に動いたのかすら判らない。


そんな彼が、不可解な自分の行動を急に取りやめたのなら、それは彼でさえ想定外の何かが起こったと言うことで。


それはどう考えても、


――……蝶々が…黄色い外套を纏った奴になって。




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