シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――――――――――――――――――――――――――――……
神崎家の前には、記憶にある青い車。
まるで場にそぐわない、違和感ある高級車が停車している。
派手好きな氷皇にしては、何とも不釣り合いな優美過ぎる曲線を持つこの車。
わざわざこの車を持参してマンションに訪れたのは、優雅で上品な玲様に貸すが為に選んだものだと…そこまでは考えすぎだろうか。
隣家のカーテンの隙間から、じっとりとした視線を感じる。
どうも…違和感或る図式が、隣人のあらぬ妄想を膨らましているのか。
私のこの格好は、隣人の妄想にどう食い込んでくるのだろう。
そう思いながら1歩足を踏み入れた私は、裏口にあたる反対側から小さな影を見つけて、思わず身体を車体に隠した。
6.7歳前後の男の子。
普通の私なら、見慣れぬ車を見に来ているのだと思ったかも知れない。
何かおかしいと、思ったのは…、彼が向ける視線の先が、車ではなく神崎家そのもので。
更にその視線の種は…
殺気だったから。
キケンダ!!!
私の警戒心は一気に高まった。
テキダ!!!
考えるより早く身体が反応して、私はテディベアを裂岩糸に顕現させた。
それとほぼ同時に、少年が懐から小型の剣を2つ取り出していて。
玩具じゃない。
間違いなく本物の武器。
双匕首(ひしゅ)と呼ばれる両刃の暗器だ。
長さは30cm弱、刃渡り約20cmもなく、柄の後ろは環が付いている。
こんな暗殺武器を持っている時点で、ただの子供じゃない。